コーチを2年間続けて・・・

  休日だけではあるがアーチェリー部のコーチを引き受けて2年がたった。教えているのは中学生と、高校生である。
 この2年間いろいろあったが、生徒がつま恋カップの優勝、中日インドアの優勝など予想以上の成績を残してくれた。そのおかげで実力以上にコーチとして評価されてしまい、今後はそれ以上を望まれるため、日々この練習方法でいいのだろうか?もっと効率のいい練習方法はないかと模索している。今回コーチとして自分が教えている練習内容と指導方法を、1つの例として紹介したいと思います。なぜこのような事を書こうと思ったのか、それには理由があります。それはこの前の練習の時に、生徒がスコアーを付ける時に7点に○印を付けているのを見たからです。
 何の事か意味が分からないと思いますが、その行動を見てちょっと感動してしまったのです。
 順を追って話しましょう。まず練習はフォーム(射形)が最優先事項となっています。そして当てる事よりも外さない事を教えます。30mで300点レベルであれば、6点に刺さった矢は明らかに外した矢です。7点も外れた矢と考えてもいいかも知れません。つまり得点が高くても、外した矢が多ければ、たまたま何本か高得点ラインにさわっていただけで、それは運が良かっただけだと教えます。合計得点よりも、10点に入った本数よりも、7点以下の本数が何本あったかで実力を判断すると言うことです。
 なぜこのような考え方をするかというと、外れの矢が多いということは、良いフォームと悪いフォームの2つ、又は2種類以上のフォームで射っている事になるからです。 良いフォームと悪いフォームが混在した状況で練習すると、良いフォームのを鍛えるのと同時に悪いフォームも鍛える事になり、練習効率が悪いからです。
 7点以下はだめだと言っているのではなくて、300点レベルなら6点以下、270点レベルなら4点以下を射たないようにするという事です。
 得点アップを望むのであれば、はずさない方法を考えた方が正解なのですが、これは言うのは簡単ですが、実行するのは難しいと思います。高い点を望むのであれば、10点を狙ってしまいます。どうしても、もっと当てるにはどうしたら良いかと考えてしまい、どうしたらはずさないかと考えないからです。
 普段から10点に入れるよりも外さない事を言い続けないと、なかなか生徒は守らないです。ですが7点に丸を付け、外した矢をチェックしている姿を見て、今まで教えていた事を実行しているが確認できて、うれしかったのです。
 生徒がコーチに頼るのではなく、自分の力で得点を上げる努力をしているのが分かったからです。
 アーチェリーの強い学校、弱い学校がありますが、強い学校はいつも強いです。おそらくその理由は、練習時や、練習量ではなく、当てる事よりも外さない事が大切だと分かっていること、ハイトを毎回測る事、Vバーの開きを毎回確認する、スコアーの控えをとるなどの簡単な事を出来るか出来ないかの差だと思います。
 生徒に聞くと、「外れた矢に丸を付けることは当たり前で、全員がやっています。」との返事が返ってきた。2年前にはありえない答えである。先輩が当然にやっているので、1年生はそれを当たり前だと思って、外れた矢に丸を付けます。これが、強い学校、弱い学校の差なのでしょう。そして、教えている学校が、強い学校の仲間入りが出来る準備が整ったと感じたのです。だから練習方法を紹介しようと思ったのです。

 さてここからが練習内容と指導方法ですが、教えている練習方法がちょっと独特な所があります。ですから、必ずしも正しい練習方法ではないかもしれません、あくまで参考例として紹介します。
 練習内容
 休日の練習時間は9:00〜11:30 昼食 12:00〜14:00となっています。ランニング、準備体操、ミーティングを行い、その後に近射を行います。この時に弓を握らない事と、フォロースルーを覚えてもらうためにスリンガーを外して何本か近射をさせます。2人一組になって、一方が射って、もう一方の人が飛び出した弓を受け止めます。インドアシーズンではこの後に6m、9m、18mと順番に下がって行きます。
 春から秋にかけて、試合が近い場合は30mを射つ場合もありますが、午前中の大半は近射です。そして午後から点取りを行います。中学生から高校生までいるので、グループに分かれて各距離を射ちます。
 50m以上の距離の場合、どこに矢が当たったか1本1本スコープで確認するようにさせています。
 今の射ち方が良かったのか悪かったのかをすぐに確認させるためです。スコープの数が少ない、単位時間当たりの射てる数が少ないという問題があるので、あまり長距離は射たせないようにしています。
 最後に柔軟体操を行い、ミーティングをして終了です。

 練習中に生徒が行射しているのを見て、気づいた点があれば、それを教えます。
 この時に気をつけている事があります。それはダメな所だけ言わないようにしていると言うことです。ダメな所を指摘する場合、同時に良い所も言うようにしています。悪い所ばかり言われていたのでは楽しくないからです。

 生徒からの質問があれば、それに答えます。
 この時には2つの事に気をつけています。それは必ず最後まで話を聞くことと、どんなにくだらない内容でもすぐに否定しないことです。生徒から相談をされないコーチは、指導者として失格だからです。どんな事でも気楽に話しかけられるコーチはそれだけ信頼されている。すなわちコーチの言葉を信用してくれる事になるからです。
 ちなみに生徒から一番多い質問は、「フォームか良いかどうか見てください。」です。どうしたら当たるようになりますか?というような質問はほとんどありません。フォームが良くなれば当たるし、当たらないのはフォームが悪いからだと普段から言っているからです。

 塩ビのパイプを使ってフォームのチェックを行います。
 強さが3ポンドぐらいしかないので、長い時間引くことが出来るし、リラックスして引けるので、理想のフォームを見つけるのが楽に出来ます。

 10点に入れるよりは、外れる矢を減らすように教えます。
 これに関しては上記にて説明済みのため省略します。

 指導にあたっては必ずその理由を言うようにしています。
 例えば、射る時に弓を握らない。これに対して握るとダメな理由を必ず言います。弓を握る瞬間は、矢が飛んだ後でなく、リリースの前から握っている。そのため、狙っている弓が動いてからリリースする事になるので、正確にリリースすればするほど、狙った所から外れた所に矢が刺さります。握るなら、初めから握っていた方が弓が動かないからましです。矢が弓から飛び出してから握るのであれば、特に問題は無い。というように説明します。

 得点が伸び悩んでいたなら、射つ本数を減らすように言います。
 おそらくこれが一番独特な所だと思います。得点の伸びに問題があるなら、それは練習内容が正しくありません。そして練習量が多い方法は一般的に言って過去の練習方法だからです。昔の得点は、今の練習量のよりも少ない量で出すことが出来ます。ですから将来は今の射つ本数より少ない本数で高い点を出す練習方法になっているはずだからです。だから、その練習方法を探すことを教えます。つまり練習方法の内容をもう一度考えると言う事です。練習量を増やす事は筋力アップ以外には効果が少ないので、お勧めできないと教えています。

 出来無いことは、出来無いので、それはあきらめるように教えています。
 30ポンドの弓が引けないのであれば、それはあきらめて、引ける範囲でどうするかを考えるように教えます。練習時間が1時間以上取ることが出来ないのであれば、練習時間を1時間以上取る事はあきらめて、その1時間で何が出来るか。Vバーをつけると弓が重くて持てないのであれば、Vバーを付けない範囲で何が出来るか。などを考えるように教えています。本人に何が大切で、何が必要でないか、必要な事の順位付けを考えさせるためです。

 精神力に頼らない。気合や根性などは一切言いません。
 試合になると実力以上の点を望みますが、それは無理です。と言います。精神力で何とかしようと考えるようですが、精神力で点を上げるよりは、実力で上げた方が簡単だと教えます。試合で点が出ない理由を精神力のせいだとすると、実力を上げる努力をしなくなるからです。試合で弱いのも含めて実力である事を認めるようにします。そもそも気合や根性で点数が出せるなら、練習で出せ!と言います。

 楽して点数を出す方法をいろいろ考えるように言います。
 練習をサボれと言っているのではありません。フォームを直すのに、鏡を使った方が効果が高いのであれば、鏡を使うと言う事です。ともかくいろいろアイディアを出して試してみることです。何かを考え試してみた場合、経験から言って30の何かを試して、その内の1つしか役に立ちません。だから、1つや2つ試してみてあきらめるのではなく、100や200も試してみる事を勧めます。そして同じAというレストを使っている場合でも、数種類のレストを試してAというレストに決めた場合と、何も試さずにAというレストを使っているのでは、大きな差があるということを説明します。

 最後に、コーチとして生徒を教えていますが、同じ立場として、つまり大人と同じように接するようにしています。これはもし自分が中学生だったなら、やはり子供扱いされるのは嫌だからです。

 これが休日の大まかな練習方法と内容です。生徒は平日も練習していますし、その時は学校の先生が指導にあたっています。近射ばかりしているわけでもなく、長距離ばかり練習しているわけでもありません。コーチがいる時にしか出来ない事はその時にして、平日に出来ることは平日にやるというようにしているからです。
 もし今年、去年よりも生徒が良い結果を出したなら、「コーチを3年間続けて・・・」の題で再び書きたいと思います。

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