チャンピオンより5番の人の話を聞け!

  「素質が重要か、それとも努力が重要か?」スポーツ競技を行うものならば、一度は考える問題である。
 この問いに明確に答えることは出来ないが、1つの考えを示してみたい。
 素質というものを例えるならば、水を入れる壷では無いかと思う。人によって材質や形、大きさが異なる。そして努力というものはその入れ物に水を入れる行為ではないだろうか。


 そして実力というものが、入った水の量であると思う。
 さらに環境は壷から水を汲むまでの距離や歩きやすさと表せる事ができる。
 つまり、実力(水の量)は、努力(水を入れる行為)によって変わる。練習方法(水を汲む容器)によっても変化し、環境(水を汲む場所)にも影響される。
 効率の悪い練習方法は、水をスプーンで汲む方法で、効率の良い練習方法は、コップや、柄杓、またはバケツで水を汲む方法になると思う。


 コーチというものは、その人に合った水を汲む容器を選び、その容器の適切な使い方を教える事になる。
 このように考えた場合、アーチェリーにおいては小さな壷だとしても、その壷にたくさんの水を入れれば、十分に張り合えることが出来ると思います。
 この考えをもとに考えると、一般人は一番壷に水を入れたチャンピオンの話を聞き、壷に入った水の量を知りたいと思います。
 しかしながら選手として考えるならば、チャンピオンの話を聞くよりも5番の人の話を聞くほうが良い場合が多いと思います。
 正確に言うなら、昨年の2位からチャンピオンなった人より、昨年の50位から5位に順位を上げた人の話の方が価値が高いと思います。なぜなら、2位から1位になるのに入れた水の量より、50位から5位になった人が入れた水の量の方が多いからです。
 選手にとって必要なのは水を入れる方法(容器)とそのスピードで、どのようにすれば自分の壷に水を多く、しかも速く入れることが出来るかが重要な問題なのです。
 50位から5位になった人の練習方法(水を汲む容器)は、おそらく最先端の練習方法なのです。
 新しい練習方法や道具は、チャンピオンからは生まれません。 チャンピオンに勝てない2位以下の選手から未来の練習方法や道具が生まれるのです。

 スキーのジャンプで、今はV字ジャンプが主流ですが、その前はスキー板をぴったり揃える方法が主流でした。 このV字ジャンプを考え出したのはチャンピオンではありません。

 長野オリンピックのスピードスケートは世界新記録ラッシュでしたが、それは「スラップスケート」と呼ばれる道具が発明されたからである。スラップスケートというのは、歯(ブレード)の踵の部分が上がる(外れる)構造になっているスケート靴のことで、もともとはオランダで発明されたものです。これを発明したのもチャンピオンではありません。

 アーチェリーにおいては、韓国の練習方法が良いとされていますが、その練習方法を生み出したのは、当時最強であったアメリカに勝てない韓国なのです。アメリカに勝てないからこそ、良い練習方法を考え出したのです。

 チャンピオンになりたい選手が参考にしなければならないのは、チャンピオンの練習方法でなく、将来チャンピオンを抜くと思われる練習方法なのです。その練習方法は2位以下の選手の中に隠れています。そしてその練習方法を考え、実践した選手が未来のチャンピオンなのです。
 残念な事に実力の高い選手は今の練習方法が正しいと考えています。今の実力になるまでは有効な練習方法だったのでしょうが、今以上に実力を伸ばそうとした時、その練習方法ではもう限界だという事に気づいていません。
 学校で1年生の時に1番だった人にかぎって、練習方法を変えようとしません。そのうちに他の選手に抜かれていきます。順位が3番ぐらいになって練習方法を変えようとするならまだましな方です。大抵は5番、10番ぐらいになって初めて練習方法を変えよう真剣に考えはじめます。その時に真似するのはその時点での1番の人の練習方法ですが、すでに実力差が付いているので、同じ練習をする限り差は縮まりません。
 勝つためには常に進化し続ける事が必要ですが、それだけでは十分ではありません。 人より速く、しかも大きく進化し続ける事が大切です。

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